クリニック通信Clinic Letter

7月の診療室だより

先週、幼友達が亡くなって葬式に行ってきたんです。たいして美人でもないのに、シワもなくて本当にきれいだった、とうらやましそうな顔のIさん、84歳。この年になるまで一度もかわいい、きれいだなんて言われたことなかった。死んだ爺さんが結婚の時、口走ったことがあったかなあ、と恨めしそうです。
コロナ流行下で葬式は簡素化され、大々的な葬式はほとんど姿を消し、葬式業界はあの手この手で収益挽回を試みています。優秀な納棺士の存在もその一つのようで、死化粧の技術も高度になっています。まるで生きているかのような化粧を施された顔は、現実より仮想現実を思わせます。
こんなに不細工でしわくちゃな顔も、あんなにきれいになるなら死んでもいいかな? 地獄の沙汰も金次第って言うじゃない、今から予約取っておいた方が良いんだろうか、一緒に高血圧と糖尿病も治してくれるかな、腰の変形も頼みたいな、あっちに行って歩けなかったら困るもんね、と意味不明の会話。生きている現実と仮想現実がごっちゃになって、そのまんまで、これからジムに行ってお風呂入ってお友達とお茶会して、と混沌の生活を楽しんでいます。

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