クリニック通信Clinic Letter

9月の診療室だより

 Kさんは今年90歳になります。10年以上も前に東京から引っ越して来ました。生涯独身、兄妹はいるようですが、札幌には誰もいません。東京から移った理由は定かではありませんが、人付き合いの煩わしさから逃れるためかもしれません。Kさんの今の悩みは、下半身が冷え、布団に入ってもなかなか寝付けないことです。

 持病の甲状腺の病気は甲状腺ホルモンの服用で落ち着いており、身体のだるさやむくみなどもなく、体調は良好と言ってよい状態にあります。

 ある日の外来でKさんが言うことには、私も余命幾ばくもありませんが、あちらの世界に行く前に足の冷える原因を知り、治療出来るなら治しておきたいとのことでした。あちらの天候もわかりませんし、あちらに行って歩けなかったら困るので治したいというのです。

 原因は、足の動脈が一部閉塞していることと思われ、動脈の閉塞部位の特定とその対策を90歳の誕生日前に行うこととなりました。あの世に行く道のりがどんなものかわかりませんが、支障のない状態で行けることを祈るばかりです。

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