クリニック通信Clinic Letter

8月の診療室だより

ご主人が認知症介護施設に入所以来、もともと外に出ることの少なかったSさん89歳、最近では玄関から出ることさえ少なくなりました。腰や膝に障害があるわけでもなく、一週間に一度近くに住む娘さんが買い物をして届けてくれるのが唯一の外との交流です。コロナ感染の自粛規制でいつも声をかけてくれていた町内会の人もポストに連絡板を入れるのみ。今日は2月に一度の診療日、人と話すのは久しぶりですと言葉を探しながらの会話になりました。
一方、奥さんが脳梗塞で入院中のTさん85歳。やはり近くに住む娘さんと一緒に来院です。朝食は食べてきたとのこと、いつものようにパンと納豆とか。組み合わせはともかく体調は良さそうです。昼はカップ麺で済ますようですが、夜は娘さんが来て夕食を作り、一緒に食べてくれます。ご主人を最近がんで亡くし、一人の生活になった娘さんがよりどころとなっています。
新型コロナウイルス蔓延のニュースが飛び交う中で、地域社会の分断が起こっています。出来ることなら周りと関わりたくないムードの中で一人老人の孤独が広がっているようですが、孤独イコール寂しさではないようで、表情は結構明るいのに驚かされます。いずれも近くに娘さんが住むことが要因なのかも。新たな親子関係の存在が地域社会の分断を埋め合わせてくれているのかもしれません。