クリニック通信Clinic Letter

5月の診療室だより

例年より2週間も早く訪れた桜の便りに時ならぬ雪、手稲山は裾野に至るまで真っ白となりました。そろそろスキー納めを考えていたSさん82歳、朝食もそこそこに手稲山へ向かいました。目的地は手稲山の山頂、すでに2人が待っていました。いずれも手稲山の裏側を滑るバックカントリースキー愛好家です。積雪は3cm、先着の2人を皮切りに次々と新雪の世界の人となりました。
短尺のスキー、幅広スキー、モノスキーなど、操作性に優れたスキーの登場で、とりわけ高齢者が増えてきているようです。逆に若い人は減少傾向です。ベテランのスキーヤーは高性能スキーのおかげで、よりうまく滑れるようになり、Sさんは週に3回は手稲山に登る入れ込みようです。けがを避けるため、その他の日はジムで筋トレに励む毎日を過ごしています。
今年85歳になるAさん、数年前交通事故で何とか一命を取りとめましたが、一時は運動はおろか話すこともできない状態でした。スキーしたさでリハビリに努め、高性能スキーの恩恵にもあずかり、手稲山でも最も難関の北壁斜面の常連となっています。構音障害やヨダレはスキーをする上での障害にならないと毎日手稲山通い、真っ黒に日焼けした顔に自信を感じさせます。
こんな心身ともにたくましい高齢者スキーヤーの存在が、一度は廃れたスキー場をよみがえらせています。誰もが憧れるスキー場のスターは、皆のすぐそばにいる普通のオジさんです。

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