クリニック通信Clinic Letter

5月の診療室だより

南の空をじっと見つめるSさん、そろそろ3時間が経過、早ければもう戻ってくる頃です。早朝、函館の木古内から放たれた彼の鳩は700羽、そして3時間半が超過した頃に、1羽が鳩舎に戻って来ました。続いて黒い塊となって次々と到着です。戻った鳩の頭をなでながら至極の幸福を味わう、これがSさんの生きがい、生きている証となっています。餌やり、鳩舎の掃除、一日はあっという間に過ぎてしまいます。鳩のエサのためにパート勤め、自分の食事は質素そのもの、こんな生活が20年以上も続いています。
何事にも凝り性のSさん、塩分制限による高血圧対策、経済対策に乗り出しました。食事の塩分は1日量6g以下に設定し、厳密な塩分制限食に取り組んだのです。野菜中心の食事はベジタリアンそのもの、体重も10kg減量となり、2種類の降圧剤は1種類に、そして今月は0となりました。塩分が高血圧症の主因であることを実証したようなものですが、あまりに急激な減塩は気力に影響があるようで、やる気が落ちたとぼやきも漏れるこの頃です。
南の空から戻ってきた鳩は560羽、80%の帰還率はかなりの高得点です。ピジョンレースの帰還率は距離にもよりますが、途中ハヤブサに襲われたりして60~70%と言われます。次は本州の舞鶴からの1000km越えのレースに参加しようとしています。
減塩食をストイックに押し進め、趣味の境地にまで昇華させたSさん、彼の食生活は限りなく鳩のエサに近くなっていくようです。

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