クリニック通信Clinic Letter

1月の診療室だより

暮れも押し迫ってKさん(69歳)は独りっきりという孤独感に押しつぶされそうです。1年前に亡くなったワンコの位牌を前にぶつぶつ独り言を言う毎日が続いています。年を考えると生き物を飼うという選択はもう自分にはないと考えていました。でもコロナコロナと耳鳴りのように聞こえる毎日に、ついに意を決しました。ペットショップに行こうと決めたのです。胸には政府からの緊急給付金10万円を用意して来ました。高血圧の心臓がドキドキドキドキと拍動するのが聞こえます。がしかし、ペットショップには10万円で買える犬も猫もいませんでした。胸に抱いた子猫に指を舐められたKさん、翌月の生活費を足すことを決意、26万円を払ってついに購入、手に入れました。名前はハナ、部屋の模様替え、キャットタワー作成とKさんの日常は一変。タンスの上で眠るハナを横目に再び腕立て伏せを始めたKさんでした。
給付金支給は最近ワンコを亡くしたNさんにも朗報でした。早速ワンコの葬儀費用と共同墓地への納骨をすることができました。位牌は、数年前に亡くなったご主人の隣に置いています。孤独と闘う高齢者はカラオケ、老人クラブ主催行事の中止の中で、ペットとの生活に生きがいを求めています。背中に背負ったバックの中に、奥さんのものではなくペットの位牌を入れて持ち歩くAさん。人生の終末を背負ったペットの温かみが、かすかな明るさを照らしているようです。

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