クリニック通信Clinic Letter

12月の診療室だより

Sさんのご主人が亡くなって早や一年になろうとする頃、NTTから突然の封書での連絡を受けました。何の連絡もないまま放置されていたとして、Sさん宅の固定電話が打ち切られるとの通告に近い通知でした。30年以上にわたって使用して来た固定電話、携帯もスマホも持たないSさんにとって唯一の外部との連絡手段です。慌ててNTTに連絡を取ったところ、これから元に戻すとなれば新たな番号に変更されるとのこと。30年以上慣れ親しんだ番号、この番号でなければ利用するのは向後困難になると判断(もともと番号を覚えるのが苦手)、NTTとかけ合うこと1カ月、ついに元の番号を得ることに成功しました。
今時、携帯もスマホも持たないSさんのような人は珍しく、一般的には固定電話の打ち切りは何ら問題となることはないのでしょうが、意外や意外、Sさんのような70代以降で固定電話のみという人は案外多いことが知られています。その理由の一つが、10ケタから12ケタの番号が覚えられないというものです。認知症ならば当然としても、認知症スレスレは多数存在します。こんな人々のために、固定電話の利用者に対しもう少し懇切丁寧な電話局のサービスが必要とされているようです。
今回の事件で3人いる息子は全く協力なし、役に立たない息子達ですが、せっせと電話をかけるSさんです。また今日も一人の息子から旅行費用の無心が来たようです。経済的余裕がある限り、携帯もスマホもなくても一人ぼっちになることはなさそうです。

一覧へ戻る