クリニック通信Clinic Letter

11月の診療室だより

お腹の不調を訴えHさんは早めに受診しました。今日は主催するカーリンコン協会による大会があるのだそうです。裏表が赤と青のディスクを投げ目印の所に集める競技ですが、投げたディスクがひっくり返るとその場のディスクが全て同色に変わるというオセロの要素も入ったゲームで、最近老人会で密かなブームとなっているとか。Hさんが主催するシニア大学は、最近下火となっている老人クラブの催しを尻目に学生300人を超える主要団体になっているそうです。シニア大学の学生となれば聞こえも良いし、大学という名前に皆弱いんでしょうね、との事。従って、シニア大学の主催する日本吹矢協会も盛況とか、そんな訳でHさんは毎日の様に朝早くから出かけることが多く、奥さんの異変には気付かないまま暑い夏が過ぎました。
シャム猫のもこちゃんがHさんの不注意で家を飛び出してしまい行方不明となって早や3週間、シッポの会(NPO)の助けを借りてあっちこっちに餌と水を入れたケージを置いて探し回ったが反応なく、焦燥感が漂うH宅でしたが、もこちゃん失踪以来、奥さんがHさんに口をきいてくれないのです。暑さで身体の調子でも悪いのだろうと思っていましたが、流石に3週間の無言は鈍感なHさんにもこたえました。
ほどなくして、もこちゃんが突然、何事もなかったかのように戻って来ました。そして何事もなかったかのように奥さんが口をきいてくれました。Hさんの日常も戻り、お腹の調子も下痢から通常便に戻ったと連絡がありました。にゃんこ一匹の絆で保たれている老夫婦の関係、怪しげな未来を予想させる事件となりました。

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