クリニック通信Clinic Letter

8月の診療室だより

今年米寿を迎えるMさん、長年悩まされていた肝炎も治癒して身体の調子は上々です。今の悩みの種は、結婚もせず勿論子供もいない、職業もなく趣味もない、ないないづくしの60歳になる息子です。ご主人が亡くなって20年、その後もずっと息子は同居中、家事を手伝う訳でもなく畑を耕す訳でもなく、冬になって除雪を手伝うこともありません。Мさんの不満は募るばかりですが、事態の改善の見込みは立っておりません。
 Kさんの息子は55歳、道内では大手の会社勤務、今年管理職につき自宅から通勤中。結婚歴はなく、付き合っている女性もいないようです。やはり家事全般Kさんに委ねられています。息子は何不自由なく生活が可能となっており、現状が変わる要因は見当たりません。
 最近、新聞等マスメディアを賑わす家庭内暴力、引きこもりが要因となる犯罪事件、親子問題が引き金となっていることを思わせる事件ばかりです。高齢化した親の行先は、認知症にかかれば様々な介護関連施設が用意されていますが、何もしない何も出来ない息子を抱えた親には見当たらず、老人クラブや趣味のクラブに行くには金も時間も余裕がありません。限りなく頼りない息子と自分が動けなくなった時を考えると、孤独死の文字が頭に浮かぶと言います。いくつになっても母親という宿命は変わらないですね、とМさん。帰りは手稲駅で周辺の人混みに紛れて唯一の楽しみの和菓子を食べて帰ります。

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