クリニック通信Clinic Letter

3月の診療室だより

Tさんに膵癌の再発を告げたとき、本人はさほど驚いた様子を見せませんでした。予期していた様でしたが、取りあえず抗がん剤を再開することに。
約3ヶ月の間に、再発膵癌は肝臓の大半を占めるほどになっていました。

Tさんは約5年前に膵癌の摘出手術を受け、経過は良好でした。好きな卓球もでき、退職後の生活をエンジョイしていたと言ってもよいでしょう。
一般的には術後5年を経過した場合、治癒したと考えるのが普通です。5年後の再発は、その意味は異常であり、膵臓癌の恐ろしさを示しています。

その後Tさんは、細くなる食事、時に吐き気、腹痛、腹部膨満との闘いとなりましたが、自宅での生活を希望、可能な限りの栄養補給、痛み対策で、半年以上家族との生活に身を置き、卓球も時々やり、家族も全面的にその生活をサポートしました。

もう限界、とTさんとその家族が申し出たのはもうすぐ春の声を聞く、2月末でした。入院したその深夜、Tさんは安らかに目を閉じた、幸せそうだった、とのTさんの娘さんの報告を翌日の朝受けました。
最後まで弱音を吐かなかったTさん、そして献身的な家族の姿に、理想的な家族像を見た思いでした。

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