クリニック通信Clinic Letter

7月の診療室だより

Оさんの糖尿病は最近コントロールが良くありません。原因は言わずと知れたコロナです。昨年末から繰り返される不要不急の外出制限は、大好きなカラオケの集まりを直撃、一時は道大会にも出演していた歌姫ならぬ歌バアさんはすっかり普通のバアさんになってしまいました。いつもの朝なら演歌を口ずさみながらの食事の支度も身が入りません。その日の予定もない朝ご飯は10時過ぎまでダラダラ状態、インスリンを打つ時間もまちまちとなり、危うい日々が続くようになりました。
社会生活が閉ざされた引きこもり状態の結果、認知症の悪化、高血圧、不眠の増加等、さまざまな病態に変化が生じるようになっていますが、糖尿病のコントロール不良はその中でも顕著な変化となっています。人と会えない、集えない、歌えない、笑えない、ないないづくしが身体に良い訳がありません。
ある朝、いつもなら起きて来るОさんがまだ床の中です。心配になってご主人が起こしに行ってみると起きる気配がありません。慌てて起き上がらせてもすぐに横になるばかり。ご主人が呼んだ救急車のサイレンで起き上がり、ご主人に手をひかれて救急車へ向かいました。低血糖発作はインスリン使用者にしばしば認められます。ブドウ糖を与えられたОさん、救急車の中ですっかり元気になりました。低血糖の最中でも手を引かれたご主人の手の温もりを感じたとか。結婚した50年前に手を引かれた時以来だもんね。

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