クリニック通信Clinic Letter

4月の診療室だより

4年前に突然夫に先立たれたOさん78歳。今日の夕食も納豆ごはん、遺影の笑顔に向かって納豆を食べることを報告、いつものように大きな声で話しかけます。食べ終わると今夜夢に出てきて下さいとお願いするのが恒例です。いつ死んでも良いように、いつあちらに行っても話題に困らないように、今の自分の生活を洗いざらい報告しておくのだとか。昨夜も夢に出なかったから、また自分は死なないと真顔で話します。コロナ肺炎が怖いからなるべく買い物にも行かないようにしているとか。死にたいのか死にたくないのか、よく分からない混乱状態にあるようです。
老人会やパークゴルフの打ち合わせにと足しげく通っていた居酒屋に、降って湧いたコロナウイルス騒ぎでさっぱり行かなくなっているIさんの所へ、居酒屋のおやじさんからお誘いのチラシが舞い込みました。格安にするのでぜひとのこと。常連のYさんの所にも来たようですが、二人ともコロナ肺炎では死にたくないと自宅待機を決め込んでいます。ピンピンころりを理想としている二人ですが、死に方の選り好みが激しいようで、コロナ肺炎は選択肢の一つではないようです。
世の中おしなべて新型コロナウイルスの話題ばかり。死にたい願望の高齢老人社会に一石を投じる肺炎騒動となっています。

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