クリニック通信Clinic Letter

5月の診療室だより

今年70歳になるSさんは名にし負う癇癪持ちです。会社の社長職を子供さんに譲り、すっかり閑職となってからその傾向はさらに強くなって来ました。団塊の世代が定年を迎え、今まで会社でも家庭でも威張りまくっていた生活が一変し、ひねもす自宅に居る生活となった途端、家族、主として奥さんから疎まれる存在に早変わりという構図は珍しいことではありませんが、なかなかその変化に対応しきれていないというのが現実の様です。

 片手の腕前を誇っていたゴルフも定年と共に始まった腰痛ですっかり落ち目となり、ゴルフに行く回数も激減、自宅にいることを更に余儀なくされているSさん、健在なのは怒鳴り散らす大声です。何が気になるのか、朝から晩まで怒鳴りっぱなしです。

 一方の怒鳴られっぱなしの奥さんは、Sさんの気持ちを見透かしたが如く平然としたものです。聞けばご主人の怒鳴り声はほとんどカンツォーネを聞いているように感じられるとの事。今日もカンツォーネを聞き流しながら好きな編み物に精を出し、午後の時間が流れています。

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