「こんな晴れた日に気分よく受診できて幸いです」とIさん88歳は明るい笑顔で入ってきました。「これで食事が良ければ最高なんだけど」高級老人マンションに住むIさんの不満は食事です。「高いお金を取って内容はいつも同じで食材も悪くなるばかりで最近美味しいって思ったことないんだもの。今朝は先生もご存じのSさんと一緒になったんだけど、美味しそうに食べていたので、『美味しいですか?』と聞いたら『全然美味しくないです』と言うの。自分が高齢で味覚が落ちているため美味しく感じないかと思っていたんですって。『表向き美味しそうな顔をして食べていたけどやはりIさんも美味しくないですか?』とSさんに言われました」
「高齢者を勝手に味覚障害と決めつけてこんな食事を提供するなんて許せないと思ったんだけど、私もSさんもほぼ90歳で、生きるため、残された老後のため食べるだけ」と諦め気味の境地だとか。「でも高齢者のささやかな抵抗を示す必要ないかしら。隣の部屋のNさん夫婦は、あるマンションの試食会で食べた昼食が美味しかったから新しいマンションに移るらしいですよ。この歳になると一年と言わず一日でも美味しいものを食べたいものよ。こんな気持ちを満たしてくれる老人マンションはないものでしょうか?」88歳のIさん、食欲旺盛、意気軒昂です。