Cさん夫婦は二人そろって89歳、何をするのも二人一緒、仲の良い夫婦です。夕食はデパートのレストランが主ですがいつも外食です、というのも奥さんは料理が苦手で、結婚以来60年以上、朝食以外ほとんど料理らしい料理を作ったことがないのが実情です。
こんな生活が一変することになるとはCさんは思いもしませんでした。ご主人が大腸がん、肺がん、前立腺がんと立て続けに罹患、何とか退院となりましたがほとんど寝たきりの上、歩くことも出来なくなってしまったのです。介護施設への入所も検討されましたがご主人が強く拒否し、奥さんの側で住み慣れた自宅にいることを希望したのです。ここで困惑したのが奥さんです。膝や腰関節の痛みでキッチンに立つのがやっとの上、料理が大の苦手。杖をついて近くのスーパーでの食材買い出しさえ困難を極め、キッチンで呆然とすることも多くなりました。「今更料理を習おうとは思わない」とCさん、苦肉の策として自分が大好きなお菓子やケーキを食べれば良いと思いつきました。お菓子やケーキなら、今までご主人と一緒にいろんな所に行き、食べ歩いています。タクシーを使えばおいしい所へ簡単に行って来られると気づいたのです。いつまで続くかわからないお菓子とケーキの夕食、でも今のCさん夫婦はけんかもなく幸せ一杯の甘い生活を楽しんでいます。