Hさんが晴れやかな顔で診察室を訪れました。こんな嬉しそうな表情を見せるのは一年振りでしょうか。同僚との軋轢からうつ病となり大手スーパーの職場から足が遠のくようになり、職場の名前を聞いただけで冷や汗が出るほど落ち込んでいました。うつ病罹患後6カ月、そんな彼女が明るさを取り戻したキッカケは友達から誘われたダーツでした。趣味らしい趣味を持たない彼女にダーツは新鮮でした。金属製の長さ15cmほどの矢を2mほど先の的に当てる競技です。神経を集中してダーツ板に向かう時、全てを忘れる瞬間を感じて次第にのめり込むようになったのです。折しもこの7月にはダーツの全日本戦が札幌ドームを舞台に開催される予定で、プロ試験を通過したHさんのデビュー戦となることが決まりました。56歳でプロ資格を得た選手は北海道では初めてで快挙と言ってもよいでしょう。そこにはうつ病を乗り越え、自信を取り戻したHさんがありました。彼女はこの9月に職場復帰することも決まりました。