「Sさんて、先生の先輩の先生なんでしょう?」と診察室に入って来るなりIさん87歳が質問してきました。同年齢のIさんとSさんは同じ高齢者マンションで顔見知りになったそうです。朝食時にいつもポツンと一人でいるSさんに話しかけたのはIさん。その後は時々朝食時や夕食時に話しかけ、少しずつ話題が増えたそうですが、話題の中心となるのは医療、いつも医療。「マージャン仲間に入れたいけど学生時代にもやったことがないらしく、全く興味を示さないの。この歳まで何が楽しくて生きてきたんだろうと思うけど、先生マージャンできる?」。Iさんによると、「お医者さんて専門用語しか知らない、いわゆる“つまんない男(ヒト)”」という分類に入るようです。早朝からジムに通い、サウナにも入って施設の朝食時間の8時半に戻る生活をしているIさんにとって、Sさんの生活は考えられないカテゴリーにいる存在のようです。「誰も訪ねて来てる様子もないし淋しくないですか?って言ったら淋しいって言うの。だから朝食だけは一緒にしてあげようと思って今日もご相伴してきたんだけど、何十年も人を助けてきた人を私が助けてあげてるのって何か滑稽じゃありません?人助けっていいですね、こんな気持ちになったのは亡くなった主人以来かしら。人助けを仕事にするお医者さんてやっぱりいいですね。でも歳とって見捨てられないようにしなくちゃ」。医者に限らず“つまんない高齢者”が最近増殖中なんだとか。