昔はアパレルの世界にいたこともあるSさん、老化の変化は隠せませんが、華やかな雰囲気を漂わせています。そのSさんも今年90歳。昨年ご主人に先立たれ、独り生活です。「年明けに手稲神社から90歳の厄払いのお誘いがあったんです。この歳になってどんな厄があるんでしょうね?」と不思議な面持ちです。ご主人の死後、乳がんに罹患、右全摘の手術を受けているSさんからすれば「今更?」という感覚になるのも無理はありません。「この後どんな厄が待ち受けているのか知りたい」と。乳がんで片方なくなったけどご主人に持っていかれたと思っているとか。「私の形が良かったから」と至極真面目です。「乳がん手術が厄と感じるかどうかは感じ方次第なのかもしれませんが、この先、厄が待ち受けているとすれば、もう一方の手術があるかもしれないということでしょうか?両方なくなったら私困ります。片方は主人にあげたけど、もう片方は私の大切な宝物。ずっと大切にしたいと思ってます。やはり厄落としをしておいた方が良いということになりますね」と一人納得して診察室を後にしました。乳がん手術も90歳通過の単なるエピソードの一つとしてさらっと受け流せるおおらかさが、Sさんをさらに強くしているようです。厄落としをして次の10年も軽快な足取りで向かいそうです。