クリニック通信Clinic Letter

2月の診療室だより

結婚して40年、定年後別会社を経てさらに5年が経過し、朝から晩までご主人と顔を合わせる日々が続くようになって、最近のSさんはイライラが募るばかりです。イライラ解消のための実力行使として最も有効な方法は、食事作り放棄。昼抜きから始まり、朝食抜き、さらには3食作らずカップ麺頼り。置き去りにされたご主人をよそにフィットネスクラブの仲間と昼食会を楽しんでいます。 

後期高齢者と言われる年代に入り、食事作り放棄層は増えるばかりです。経済的主権を失った夫は食事作り主導権を握る奥さんに従わざるを得ません。Eさん夫婦は最近、高齢者マンションに一戸建てから引っ越しました。幸い、JR駅に近い自宅が高く売れたことにより可能となったのですが、自宅に固執するご主人が、「これは自分の力で買ったものだ」と主張してもすでに後の祭り、高齢者マンションの部屋は別々。階は同じものの全く別の場所に住む感じです。「しょぼくれた夫の顔を見ながら生活するのは真っ平」とサバサバしたものです。「働く夫の生き生きした顔なら許せるけど」とのこと。傷を負った雄ライオンは簡単に雌ライオンに見捨てられるとか。自然界の掟は高齢の人間の世界においても厳然と存在しているようです。

「今日は仲間と麻雀の日でした」と明るい笑顔の後期高齢婦人のSさん、一時の血圧の不安定さも落ち着いてアイシャドー、マニキュアですっかり若々しい様相です。

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