定年延長でつい最近まで営業職で働いていたOさん、このコロナ禍でオンライン制度の導入を機に退職を決めました。73歳、まだまだ働く気はありましたが、ステイホームはそれまでの生活スタイルを180度変えました。元々アルコール好きで、酒量は焼酎2合から飛躍的に増加し、5合からいつしか一升を超えるほどになっていました。朝から飲むOさんを連れて外来受診した奥さんは疲労困憊、すっかりやつれ果てていました。
コロナ蔓延下で楽しみはお酒、と決め込んだ多くの人がいます。行きつけの居酒屋は閉められ、会合と称した飲み会はなくなり、唯一の運動だったパークゴルフも大方なくなりました。運動といえば3日に一度、酒屋に寄って焼酎の品定め。酒が残されたわずかな生きがいになっています。
アルコール依存症は、かつては40~50代の働き盛りの精神身体疾患でした。会社生活に疲れた多くの働き蜂が犯され、廃人と化した時代もありました。
難聴のため、自宅のテレビを早朝から大音量でかけっぱなしにしているIさん、88歳。今までは細々と焼酎の水割りをたしなんでいましたが、テレビの宣伝に触発され、急に高級ウイスキーに切り替えました。格段に味の良くなった水割りからストレートを愛好するようになり、ウイスキーの消費量がアップの一途。減るばかりの年金不安を抱えて、奥さんや子どもの説得も聞こえていないのか、全く耳を貸す様子がなく、ガンガンとつけっぱなしのテレビの前で今日もウイスキーボトルを抱えています。