この日も熱帯夜が予想される午後の外来に少しくたびれ気味のKさん(79歳)。いつもは明るい声が湿り気味のようです。飼い犬のチワワが暑さで元気がなく、ぐったりしているとか。
一度肺炎で入院していたご主人が退院して帰宅。10日間の入院ですっかりやる気のなくなったご主人の介護は、Kさんの肩にずっしりとかかってきました。下の世話から入浴まで全てKさん頼みです。週2回の訪問介護ではないも同然です。糖尿病でインスリン使用中の高齢(16歳)の飼い犬ですが、この子の世話をする時がほっとする瞬間とか。アイスを口に、疲れた身体でソファーにくつろぐ横で、最愛の飼い犬にもアイスを食べさせます。
退院後、急速に進んだご主人の認知症。60年連れ添った今、最愛といった形容詞はご主人につきません。この暑い夜、入浴介助を思うと気が滅入るとか。若い頃と同じように命令するご主人に幼児言葉で返すKさん。言うことを聞かない時は褒めるといいのよ、と幼子に対する要領で接する日々が続いています。もうすぐご主人が先に入っていたお風呂も、入浴大好きな飼い犬に取って代わられるかもしれません。