クリニック通信Clinic Letter

8月の診療室だより

先生、また太っちゃった、と診察室に入るなりOさん。このところ、持病である糖尿病のコントロールは悪化の一途で、申し訳なさそうに身を縮め気味です。元々食べることの大好きなOさんは、79歳の今まで過食と肥満との闘いでした。唯一の運動は家事とお茶の教室。何とかこの4月まではバランスを維持してきたのですが風向きが変わりました。
長い役所勤めを終え、第二の職場で20年以上も勤めるご主人には、若い頃からあたためていた計画がありました。料理です。20代の頃はクルーズ船の料理長を夢見ました。さすがに80歳を超えてどこそこの料理長を目指すわけにはいきません。決して得意ではない料理を、長年苦労して続けてきた妻に報いるべく家事をかって出たのです。
今日はご主人自慢のペペロンチーノと、デザート付きです。まがりなりにも働いている奥さんにはやや多めの盛り付けで、毎日一緒の食卓にはワインも付いています。一瞬主治医の顔が浮かびますが、もう太ってもいい、糖尿病で死んでもいいと今夜も完食。ユニクロのLサイズコーナーに行かなくちゃと腹回りを目測する日々が続いています。

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