クリニック通信Clinic Letter

2月の診療室だより

大晦日の夜10時、ミュージックパブ“J”には満員のお客がつめかけカラオケに興じています。年越しを“J”で過ごし初詣に繰り出そうという人々です。手稲の地にこの店をオープンさせて約30年、オーナーのOさんは年中無休で“J”を維持して来ました。 脚本家倉本聡で名高い“北の国から”のほのぼのとした温かさとは無縁の厳しい寒さばかりの中富良野でOさんは動いているものは何でも食べて育ちましたが、17歳で高校中退して札幌へ。色々仕事を変えて38歳で念願の店を手稲に構えることが出来ました。ウイスキーを2日で1本空ける生活を続けて来ましたが、さすがに大量のアルコールによる肝臓障害が目立つようになって来ました。顔、特に瞼の周辺の浮腫み、脚の浮腫み更には息切れも出て来るようになったのです。お腹には腹水と、これはアルコール性肝硬変の典型的な症状です。飢餓にも耐えて来た肝臓も長年のアルコール漬けには耐えられなくなったようです。 こんな状態でも“J”を休むことなく営業は続けられました。腹水があろうが、真っ赤や褐色の尿が出ようが、お客さんはお構いなしに押し寄せます。でも心ある人はカウンターに入りマスターの代理、料理も出してくれ、勘定まで。お客さんに支えられて30年。そう簡単には店を閉められません 初詣を終えて、お客さんが再び“J”に戻って来ました。これから朝までカラオケ三昧、興に乗ったOさんも歌い出します。

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