クリニック通信Clinic Letter

1月の診療室だより

 札幌で真夏日を記録したその日、ヨークシャテリアのハリー17歳が亡くなりました。それまで3カ月に渡り昼夜問わず看病していたМさんは、いつもの笑顔いっぱいの表情が消え、沈み込む日々に変わってしまいました。ハリーを思い出しては涙ぐみ、涙が渇けばかりんとうを口にしみるみる肥満体に変貌、眠り薬がなければ眠れない状態となってしまいました。

 そのМさんがある日ご主人と一緒に来院しました。目的は禁煙。ご主人は毎日60本のヘビースモーカー、Мさん本人も毎日20本、30年近くも吸う日々でした。犬の寿命としたら17歳は充分長命と思われますが、ハリーが死んだのは夫婦が吸っているタバコが原因と思い込んでいるようでした。ハリーの死から3カ月、夫婦の所に新しいヨークシャテリアのテリーがやって来ました。ハリーそっくりのテリーは瞬く間にМ家のアイドルになると共に、夫婦の禁煙宣言となった次第でした。

 喫煙は肺気腫、慢性気管支炎の元凶として広く知られていますし、肺癌の原因としてもまっ先に挙げられる生活習慣と言われるため、近年、禁煙外来受診者は激増中です。内服剤を用いた禁煙は成功率が高く手軽に実施出来ることから、以前用いられたニコチンパッチより若年者、老人を問わず利用されるようになっています。その多くは肺気腫寸前か同居中の家族の二次喫煙予防が引き金となっているようですが、同居中のワンコの二次喫煙予防目的はあまり例がありません。

 ショッピングセンターでの大量のかりんとう買い溜めの必要がなくなったМさん、禁煙成功による朝の咳痰消失が加わって再び明るい笑顔が戻って来ました。М家の新しい希望の星となったテリー、元気で家中を駆け回っている限り、夫婦の禁煙は続いてくれることでしょう。

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