クリニック通信Clinic Letter

4月の診療室だより

 毎週定例の麻雀を楽しんでIさんは帰宅しました。家のドアを開けた途端、重苦しい空気に包まれます。今日もご主人はテレビの前のソファに寝転んでいます。“ただいま”の声にも返答はありません。1カ月前にロータリークラブの定例会に出席して以来、一歩も外に出ていません。何があったかわかりませんが、もうロータリークラブにも出ないと言っています。少し外に出てみたら?の誘いにも怒鳴り声が返ってくるばかり、うるさいのはどっちと思いながら話題はそれっきりで、最近少し音量の上がったテレビの声が家に響くばかりです。

 Iさんのご主人は最近まである中小企業の管理職をしていました。会社でも怒鳴るのは有名だったようですが、沢山の部下を従えて75歳まで働いていました。勇退後の生活は色々な役職時代からの会の継続もありましたが、勧められた老人クラブでも1日限り、デイサービスにも行ってみましたが、玄関で車椅子を見た途端帰ってしまいました。行き場のないイライラ感で、家の中はいつもピリピリと張りつめたような緊張の漂う空間と化してしまいました。一方のIさん、今日は女子会の催すカラオケ大会の日です。昼間のスナックを借り切り10人程が集まりました。スナックの小さなステージでは衣装をまとったメンバーの一人がシャンソンを歌っています。若かった頃、ススキノのシャンソンバーにご主人と二人で行った時を想い出し、思わず口ずさんでいました。今日は帰りにイチゴを買って一緒に食べようかな。

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