クリニック通信Clinic Letter

8月の診療室だより

 90歳の女性Hさんが今日も痛い膝をかばうようにやって来ました。長い間座っていると足がむくんで困るといつもの不満をもらしながら椅子に座ります。相変わらず浮腫みの強い足は少し重そうです。今朝も食欲はあったとの事、いつものように味噌汁3杯、浅漬けのキュウリを食べてきたとの事。塩気のないものは食べたくないし、生まれてこの方中途半端な塩加減のものは食べたことがないと、フアッフアッと笑います。夜は4回から5回おしっこに起きるのが今一番困っているとの訴えですが、塩分の摂り過ぎに心臓も困っているようですよとの指摘には知らん顔です。じいさんもばあさんも同じ食事だった、90歳以上生きた、平均寿命より長かったと開き直り気味です。暑い時にはこれがおいしいのよねと紙袋から取り出したのは塩飴、診察室の机にひとつ置き、いつもの血圧の薬を希望してご帰宅です。

 心臓疾患をかかえたKさん86歳女性の楽しみはサウナ、今日の私の心臓はあまり機嫌が良くないんですよねと不整脈を訴えます。今日はいつもより浮腫みも強いようです。長めのサウナや水風呂は避けた方が良いですよと牽制球を投げても、そうですね、と軽くかわします。こういう時はサウナが一番なんですよねと帰りしなに一言。きっと今日もJRタワーのサウナに入りに行くことでしょう。

 一般的にはかなりシリアスな病気を抱えたこれらHさん、Kさんのようなご婦人、一筋縄ではいかないふてぶてしい生き方にはある意味共感を覚えながらも、1か月後には元気で受診してくれるのかなと一抹の不安を感じ得ません。

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