クリニック通信Clinic Letter

6月の診療室だより

ある疾患が蔓延しつつあります。頭痛、めまい、肩こりが一般的な症状ですが、しばしば不眠、食欲不振、排便不良などが加わり、まさにウツ状態。

 Tさん65歳、週に数回はジムに通うおしゃれな婦人です。30代の頃からベリーダンスに親しみ、現在も週に2回はトレーニングに打ち込んでいるため、生来の明るさに加えてスタイルも際立った存在です。その彼女が最近急激にウツ傾向に陥り、明るさが影を潜めるようになって来ました。原因ははっきりしていました。退職したご主人が毎日家に居ること、今まで好きな時に外出出来たのが思うようにいかなくなったこと、暇になったご主人がジムの行き帰りの送り迎えをするようになり仲間とのランチ、お茶の付き合いが出来なくなって来たこと等が原因です。典型的な“夫原病”という状態です。

 Tさんの例が夫原病Ⅰ型とすれば、Iさんの例は全く異なります。Iさんは根っからのおしゃべり、話していないと欲求不満になるタイプです。一方のご主人、やはり家に居ることが多いのですがまったくしゃべることがない寡黙そのもの。Iさんがいくら今日の出来事、子供の事、孫の事をしゃべっても一言も返して来ません。Iさんはそれでも一言を期待してしゃべりまくります。その結果、手のしびれ、脚のしびれ、肩や肩甲骨周囲の痛み、頭痛を訴えて受診します。過換気症候群状態になったのです。夫原病Ⅱ型と言って良いでしょう。

 夫原病は夫が退職後から発生することが多いようですが、趣味を持たない夫と多彩な趣味の世界を構築済みの奥さんとの深い溝が原因のようです。Ⅰ型のTさんのような、毎日付きまとわれ、ストーカー行為とも取れるご主人の行動には痛ましさを感じる世の男性も多いのではないでしょうか。

一覧へ戻る