クリニック通信Clinic Letter

6月の診療室だより

 今年で103歳のSさんが77歳の息子さんと3か月ぶりに受診しました。足どりは軽いとは言えませんがしっかりしています。少しばかり耳が遠いことはあっても日常生活に問題なく、週3回のデイサービスには休むことなく通っています。他の人との会話が楽しみの一つです。一通りの診察を終えると立ち上がり“有難うござんす”といつものご挨拶を残して帰宅しました。時代を感じさせるこの一見歌舞伎調のご挨拶は大正3年生まれの日本人代表の気概を感じさせます。

 かくしゃくとした90歳を超える老人が増えています。Tさんは大腸癌をかかえ、高血圧、腎機能低下を伴っていて、病気を見ればさぞ弱り切った老人を想像させますがTさん自身は意気軒昂そのもの、小樽と札幌のマンションを毎日のように行き来しています。認知症による車の事故が取り沙汰しきりの昨今、毎日のように車での通勤を続けています。大腸癌はこの先どうなるでしょうね?と他人事の様に話しますが、今の所大腸癌との平和共存は成功している様です。人生は自分で造っていくものという確信を感じさせるこんな老人、“有難うござんす”と言ってこの世をおさらばするのでしょうか。

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