クリニック通信Clinic Letter

5月の診療室だより

糖尿病のОさんは1年を通じて特異の経過を辿ります。春と秋になると糖尿病のコントロールが俄然良くなります。雪解けが進む4月のある日、段ボールに詰めた大量のあづき菜が元気一杯のОさんと共にクリニックに届きました。道南の山まで親子熊との遭遇にもかかわらず遠征した結果です。4月の雪解けに合わせて行動を開始するОさんはこの山菜採りに言ってみれば命をかけて毎年出かけています。どこの山なのかは家族もわかりませんが、採れた山菜の量やきれいに根の近くを切っていることから、毎年の行動が計算されて行われていることがわかります。あづき菜の後はウド、そしてフキが続きます。80㎏の体重がこの間に75㎏に減ることから、その運動量の多さが窺がわれます。暑い夏を耐えた後は落葉きのこの季節がやって来ます。こうしてОさんの糖尿病は山菜採りに合わせて改善し、山菜採りをしない時期になると悪化を毎年繰り返すことになるわけです。  糖尿病の治療は食事と運動が基本ですが、簡単そうに見えてなかなか困難を伴うことが多いようです。実利を伴う山菜採りは願ってもない運動療法ですが、なんといっても季節限定、残りの季節は野放し状態となる訳で、結果として糖尿病の合併症に悩まされることになります。糖尿病性腎性による脚のむくみを気にしながら、今日もОさんは山に出かけました。山菜と共にあるОさんの元気一杯、何やら不安を感じつつも、いつまでも続いてくれることを祈るばかりです。

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