クリニック通信Clinic Letter

2月の診療室だより

 通称“角サン”を好んで飲むSさんにとって、ウイスキー片手にギターを弾くのは最も好きな時間の過ごし方でした。仕事の合間には、老人ホームを慰問したり、ボランティア活動にも積極的でしたが、ここ1~2年はその意欲もさっぱりです。

 その理由は、最近とみに増えた酒量によります。角サンの消費が2日で1本になった頃から急速にやる気がなくなってきた様です。

 アルコール性肝硬変症は健康な人が突然変化してしまうように見えますが、実は肝機能の改善と悪化を繰り返すうちに元に戻らなくなるがts状態といえます。いわゆる肝不全を呈することが多く、高アンモニア血症を伴うため、急速に判断力、記銘力の低下が起こって来ます。社会的活動は勿論ですが、生活そのものも乱れてしまうため、多くの場合仕事もうまくいかなくなります。

 Sさんも結局、生活保護を受ける身になってしまいました。好きな“角サン”は相変わらず手元に置いたままです。

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