クリニック通信Clinic Letter

12月の診療室だより

 御洒落なAさんが、着る物や身につける物に無頓着となって来たのは最近のことですが、その異変に奥さんはかなり前から気が付いていたようです。又、Aさんに近付くと異臭があることにも気付いていました。

 Aさんはずっと以前から近くの医療機関で脂肪肝の指摘を受けていましたが、軽い肝機能障害だけであまり気に留めていませんでした。知り合いの勧めもあって札幌の病院を受診し、そこで初めて肝硬変症の診断を受けました。

 非アルコール性脂肪性肝炎(NASHと呼ばれる)は脂肪肝を呈する肝疾患で、脂肪肝でありながら肝硬変に比較的早期に移行するため最近注目されています。また、肝癌の発症もしばしば認めるため慎重な経過観察が必要です。Aさんも肝癌を発症、ここ数年はラジオ波による治療を受けていましたが、肝機能の低下が思いの外早く、高アンモニア血症を呈するようになってきたのです。奥さんが感じた異臭は、呼吸から出るアンモニア臭だったのです。急に不機嫌になり怒り出したり、1日中うとうとしたり、うたぐり深くなり、奥さんが外出すれば愛人が出来たのではと疑い大騒ぎになる始末です。

 こんなAさんでしたが、治療によりようやく落ち着いて来ました。しかしながら、いつ再び同じ症状が出るのかと、家族は戦々恐々の毎日です。

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