クリニック通信Clinic Letter

8月の診療室だより

 ステーキ減量法、これは70歳になるIさんが考案したメタボ対策でした。大好きなステーキを毎日食べることで痩せられるという、お金のことを考えなければある意味理想的な減量法と言えるでしょう。その他のものをあまり食べなければ確かに体重は減ってくるようでした。

ある日、ステーキ減量中のIさんが胸のチクチクする痛みを訴えて来ました。体重は6㎏ほど落ちていましたが、どうも心臓に問題が生じて来たようです。CTによる心臓の血管造影では、2本の内の1本の動脈がほとんど閉塞状態にあることがわかりました。減量に成功したIさんにとっては苦々しい限りですが、閉塞寸前のその冠動脈にステントという人工物を挿入することは不可避でした。

数日後、ステント挿入後のIさんは足取りも軽く元気そのものでしたが、好きなステーキは止められないとの事。栄養士泣かせのIさんの向後が危ぶまれますが、生き方は自分で選ぶものとの、しっかりとした意志表示は敬意を払わなければいけないと思います。生きるということは長生きだけが目標ではあらずとの医療に対する警告とも感じられました。

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