クリニック通信Clinic Letter

6月の診療室だより

80歳になるKさんにとってご主人の死は衝撃の出来事でした。ある日の外来に現れたKさんは娘さんに付き添われ、日頃の饒舌は影を潜め眼もうつろ、自分の居場所がない風情でした。長年の伴侶に先立たれた結果、一気にうつ状態となってしまった様です。娘さんは呆けたお母さんを向後どうしようかと相談に来たとの事。

 高齢者の認知症は急速に増加している様です。その代表例であるアルツハイマー病は脳内にアミロイドという物質が沈着するためと言われていますが、最近の報告によると、睡眠の質の低下がこのアミロイド沈着と関連性が高いと言われています。即ち睡眠時間が長くても、眠りの質が悪ければ(無呼吸等でしっかりと睡眠がとれていない)アミロイド沈着を促し易いとの結果です。日頃の臨床現場において、不眠の訴え、日中の居眠り等はしばしば経験されることであり、認知症とのつながりの可能性は納得し易いと言えます。

 少量の眠剤によって眠れるようになったKさん。娘さんの付き添いもなく受診されるようになりましたが、遺影を常に前に置き野球観戦、遺影と共に二階の部屋でカラオケをし、一人で置いておくと心配だからと、そそくさと受診を済ませ帰宅します。

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