クリニック通信Clinic Letter

4月の診療室だより

Sさんの受診理由は高血圧でした。頭痛、耳鳴りを伴っており、60歳半ばの女性として珍しいことではありませんが、常に高血圧を認める訳ではない不定期高血圧ともいうべき変則的なものでした。

 実はSさんには31歳の娘さんがおり、最近離婚して千葉から札幌に戻ってきているとの事。うつ病で抗うつ剤を各種服用中で、付き添いで精神科病院を受診する日の前後は決まってSさんに頭痛やめまい等の高血圧症状が出て来るようなのです。娘さんは自傷歴があり自殺念慮があるため、外出時はいつ車の前に飛び出されるか気が気でないとの事。

 最近著名な欧米医学雑誌にうつ病患者と製薬会社との間で和解が成立し、莫大な和解金が支払われたとの発表がありました。最近の抗うつ剤使用と自殺増加の関連性が高いという裁判所の判断に基づいたものでした。日本においても同様の指摘があるようですが、あまり大っぴらに報道はされていないようです。

 Sさんの娘さんの抗うつ剤は増えるばかりのようですが、自殺の心配も日に日に増しているようで、Sさんの高血圧は治まる気配はありません。

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