クリニック通信Clinic Letter

7月の診療室だより

 温厚なMさんが突如としてご主人に攻撃的になったのは最近のことです。それまではお二人で仲良くクリニックを受診していました。少し元気になったMさんを見て、ご主人が早朝のジムに通い始め、午前中の早い時間、家を留守にすることが多くなったための様でした。今まで常に側に居てくれていたご主人が留守がちとなり、有らぬ疑いがご主人に降りかかることになったのでした。それからは、地獄の夫婦喧嘩が連日繰り返されることになりました。
? MさんはC型の肝硬変症の持病を有し、最近では肝不全状態が進展傾向にありました。
肝不全の憎悪は、高アンモニア血症という病態を引き起こし、精神状態は極めて不安定となり、疑り深くなると共に初期においては攻撃的に、後期になると無反応状態に陥ります。
Mさんの血中アンモニアは正常の3倍を呈していました。
 俳優の亡くなった南田洋子さんの例に見るまでもなく、高アンモニア血症は認知症との区別がつきにくく、治療に難渋することが多いのですが、最後は家族の愛情が決め手となる様です。Mさんもご主人の支えなしにはこの難局を乗り切ることは難しい状況ですが、言うは易く、行うは難しというところでしょうか。

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