寒さが厳しくなる11月になると、各医療機関ではいっせいにインフルエンザワクチンの実施に追われるようになります。今年もそんな慌ただしい季節となり、又々ある患者さんを思い出す頃となりました。
Aさんは、今までインフルエンザのワクチンをしたことがありませんでしたが、その年のインフルエンザは猛威をふるい、老人施設での死亡者が出始めていました。そんな中で、意を決して、Aさんはワクチンをすることにしたのでした。近くの医院でワクチンを受けた2週間後、Aさんは身体の異変に気付きました。倦怠感、食欲不振が高度となり、結局入院する羽目に。入院後も症状は改善せず、逆に悪化の一途をたどり、一時は生命の危機とまで騒がれる始末となりました。
Aさんから必死の相談を受け、自己免疫性肝炎を疑い、別の病院への転院を勧めました。
生ワクチン等やウィルス感染による自己免疫性肝炎はさほど珍しいものではなく、適切なタイミングで治療することにより速やかに改善します。たかがワクチンと言いながら、初めて行う治療(予防)には慎重さが必要であり、そのため、施行前には詳しい個人アンケートが要求されるのです。