クリニック通信Clinic Letter

9月の診療室だより

「もう駄目、ようやくたどり着いた」とYさん81歳。顔色も悪くフラフラです。3年前にコロナ肺炎で入院、人工呼吸器を装着されましたが、1カ月で何とか生還したもののコロナ肺炎後遺症で当時からあった糖尿病性腎症が悪化、退院時には透析が必要と告げられたが振り切って退院、透析スレスレの状態で今に至っています。
「今度、老人会の旅行で定山渓に行くんだけど行っても良いよね? バイキングが楽しみなんだ」と塩分制限などどこ吹く風です。旅行の後すさまじい倦怠感に襲われるのは目に見えていますが、毎回懲りる気配はありません。「バイキングではお父さんも私の好きなイクラやタラコを運んで来てくれて、私がおいしそうに食べるのを喜んでいるしさ、2~3日我慢すればだるさも取れるから」と気にする様子もないようです。悪化する腎臓性貧血は最近の医学の進歩で比較的簡単に元に戻るのも幸いしているようです。
「今日もふわふわに体が浮遊してる感じで、手稲山口の火葬場の煙突から煙が上がってるのを見たけど私でなくて良かったと思うんだよね。ここのクリニック来たらあの世に行きそうになるのを引っ張り戻してくれるから助かってる」。あの世と現在を行き来しているようなYさん、火葬場の煙を見るのが、ほっとする、自分が生きていることを実感する瞬間とか。

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