クリニック通信Clinic Letter

11月の診療室だより

タコ5匹、昆布10kg、干物10kg等々を前に、Yさんの奥さんは困惑顔。ご近所に配りきれないし、歌声ではいつも迷惑をかけっぱなしだし、と散々嫌味を言われて逃げるように家を後にして受診したYさんは持病のリウマチ性筋痛症に悩んでいます。最近、内服剤の増量で痛みは落ち着いているものの薬の副作用で太り気味です。太ると声の質が変わるため、趣味の民謡の江差追分に影響が出るのを恐れています。特に高音部の発声がうまくいくかが心配されます。というのも、江差追分全国大会が近付いているためです。江差追分全国大会は、全国から2000名が参加する一大イベントです。各地区から選抜された110名が9月16日~18日に江差に集結して覇を競います。最終日、残った25名で最終戦が始まりました。Yさんもこの中の一人に選ばれました。参加者の多くはこの最終戦に残るのが夢です。会場の江差文化会館は満員の盛況です。心配されていた高音部も無事に歌い切り、満場の拍手に包まれました。そして優勝者の発表です。司会者の甲高い声はYさんの名前を告げました。熟年部門110名のトップについに躍り出たのです。Yさんは今まで予選落ちを繰り返しており、最終戦にも数回残っただけでした。
江差追分では優勝者の一人勝ちといわれます。じゃがいも50kg、海産物も10kg単位で多数、商品券、賞状16枚等々、YさんのRVはいっぱいになってしまいました。さらにこの年末にかけ、各種催し物に引っ張り出され歌を披露することが求められています。薬の副作用と闘いながら、今日も発声練習に余念のないYさんです。

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