クリニック通信Clinic Letter

11月の診療室だより

お年寄りになりきれないお年寄りが増えているようです。Tさんは今年で93歳になりました。杖をつくことなく、少し猫背の体を屈み気味にしてお腹をかばうように診察室に入って来ました。今朝から胃が痛み、20年前に手術した胃癌が再発したのではないかと心配で胃の検査を希望しての受診でした。小柄なTさんですが現在の体重は50kg。本人は痩せて来たといいますが半年前と左程変りはないようです。お腹の張りもなく便通も良いようでした。
90代で一人で歩いて通院する人が増えています。多少の体の衰えはあるものの家族に付き添われることもなく、予約の日に、予約の時間に現れ、しっかりと次回の予約を取って帰宅します。新聞にもしっかり目を通し、畑の世話もし、採れたキュウリの漬物を食べ、三食をはずすことはありません。仏壇には庭の花を供え、いつお迎えが来ても良いようにしているとか。こんな準備万端のお年寄りの中にあって片やTさん、胃癌の再発を心配して、胃の検査やCT検査を予約して帰宅しました。体の衰えを、新たに生じた病気のためと信じて気持ちは真に50代です。Tさんのようにお年寄りになりきれない老人にとって、100歳を超えて報奨金を老後のためにとっておくと言っていた金さん銀さんの話は冗談ではなく、至極真面目な話なのかもしれません。
胃腸症状はコロナワクチンの副反応との説明にも納得せず、Tさんの内視鏡検査は来週に迫っています。

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