クリニック通信Clinic Letter

7月の診療室だより

お父さん!昼の薬を飲む時間ですって、とお母さん。卓上の電話を手に取り、息子さんの声を聞いてお父さんに指示を出しました。ソファーでぼーっとしていたお父さん、おもむろに立ち上がって食道の机の上の区分された中から薬を手に取りました。違うって!再びお母さんの声。それは夜の分の薬、表に書いてあるでしょ!その隣の薬でしょう!ピンポーン、玄関に宅配の夕食が届けられたようです。すかさず電話の音、息子さんからの電話です。玄関に宅配の人が来てるからお母さん出て下さい、の指示。
 Hさん夫婦は一時期認知症の施設に入所しておりました。ご主人は中等度の認知症で何とか日常の生活が出来ていましたが、施設入所後、排尿排便が間に合わなくなりしばしば失禁、奥さんは下の方の始末には問題がないものの家事はほとんど出来ない状態。結局、施設からの訪問回数を増やす形で自宅に戻ることになりました。入浴は週2回施設で受けることとし、食事は基本的に宅配サービスを受けることとなったのです。自宅には各部屋に監視カメラが取り付けられました。スマホが扱えないご夫婦への支持は近くで生活する息子さん夫婦が監視カメラで観察しながら電話指示、それを認知症が軽度のお母さんが受けるという形態です。 Hさん夫婦は各々86歳と85歳、長年住み慣れた家だとトイレも間に合うようになり、訳もなくうろうろすることが少なくなりました。会社を定年となった息子さん、テレビ画面で実家の状況は四六時中、手に取るようにわかるようになりました。
 高齢の認知症患者はぞくぞくと増えています。介護施設での対応には限度があり、家族による高齢の親の介護は新しい技術の導入が欠かせないようです。

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