クリニック通信Clinic Letter

12月の診療室だより

 高血圧で通院中のKさんは現在80歳。娘さんとの2人暮らしです。親子2人に共通しているのは先立たれたKさんのご主人と、離婚した娘さんのご主人が根っからのバクチ好きであったこと。麻雀、パチンコ、何でもありで、家でも車でも皆バクチにつぎ込んでしまう有様で2人とも苦労を重ねて来ました。死別、離婚でこの母娘にはようやく平安が訪れたようです。

 こんなKさん宅にある日電話がかかって来ました。埼玉にいるお孫さんが女性問題で500万の請求をされているというのです。年金10万での生活で500万の金などないことは孫も充分わかっているはずで、Kさんには直ぐピンと来るものがありました。バクチの旦那に何十年もだまされ鍛えられて来たKさん、娘さんはパートで昼は留守であり、話し相手欲しさもあって根掘り葉掘り話を聞き、お金の工面もあるからとか言って次の電話をもらうこととなりました。

 1か月後、埼玉県警より一味を一網打尽出来たことによる感謝状をもらうこととなりましたが、Kさんの顔は今一つ冴えません。道で財布を拾って届ければ幾ばくかの謝礼が出るのに、詐欺団をつかまえるきっかけを作ったKさんには感謝状だけというのが腑に落ちなかったのです。年金は下がるばかりで、年金10万の生活がこれからも続きそうです。

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