クリニック通信Clinic Letter

11月の診療室だより

現在78歳のIさんは自ら認める愛煙家であり、半世紀にわたりタバコを吸い続けています。その結果、Iさんの肺は典型的な肺気腫を呈しているのですが、坂道での息切れ等には全く無関心のようです。今最も使用されている吸入薬や去痰剤には見向きもせず、これまた何十年も使用している、彼が信奉しているある水薬があるのです。その薬の名はアルロイドG。胃潰瘍を中心とした、胃粘膜に作用する、もともとは昆布から作られた水薬なのです。彼の場合、咳が出た時も、喉が痛い時も、頭が痛む時も、いつもアルロイドG。便秘の時ももちろんアルロイドG、究極の適用外使用と言えます。一般的に適用外使用とはもっぱら高度医療と称する疾患に、主として、新薬を新たな目的に使用する場合(例えば癌治療等)を言いますが・・・。肺気腫にも効く、夢のような薬アルロイドG。Iさんのための、Iさんにしか効かないこの薬、今のところ追随する人は現れていませんが、万能薬というのは、使う人の気の持ちようによって存在する薬のことを言うのかもしれません。アルロイドGおじさんは今日も飲み続けています。

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