クリニック通信Clinic Letter

10月の診療室だより

 Kさんは80歳、持病の高血圧のため2ヶ月に一度受診しています。趣味は修繕。着る物から家の壁、垣根に到るまで何でも直してしまう何でも修繕屋なのです。家の居間は、直し途中の衣類やその切れ端が散乱し、足の踏み場がない程とか。そんな彼女が毎日決まって記入し整理しているのが家計簿、すでに40~50年分が一画に積まれています。Kさん宅で起こった数々の事件、子供の結婚式、出産、孫の発熱、Kさん家の系譜がそこにあります。家計簿に併行して記録されているのが薬服用記録。どのような薬をいつ何時に服用したかが詳細に記録されています。Kさんには飲み忘れという言葉はないようです。

 この世で起こったすべてを記録してあの世に持って行きたいと考えているとか。必ず役に立つと真顔で説明してくれます。出来ればあの世への一泊ツアーを企画してくれる旅行会社がないか調査中とのこと。変なおれおれ詐欺にひっかからなければいいがとの心配をよそに真面目そのもの。今日も、来たるべき冬に向けて庭の木の冬囲いに多忙な一日を過ごしています。

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