クリニック通信Clinic Letter

1月の診療室だより

 85歳になるKさんが、とうに亡くなったご主人が来たとか先祖の話をし出したため、認知症の病院を紹介して欲しいとお嫁さんが伴ってやってきました。数日来、ぼけ症状は憎悪の一途のようで、家族としては、いよいよ来るべき時が来たと判断したようでした。2~3日前には風邪症状のため近医で風邪薬を処方され、受診時には微熱が認められるのみ。

 高齢者の急激なぼけ症状は、転倒等のアクシデントがない限り、急性感染症が最も多い原因となります。Kさんの場合も、肺には強い雑音を認め、明らかに肺炎を有していることが疑われました。案の定、彼女の胸の写真には肺炎陰影を認め、治療が開始されました。高齢者の肺炎の場合、比較的症状が緩やかなことが多く、高熱を出すことは稀と言えます。Kさんの場合も、肺炎による換気障害と食欲不振による脱水が一気にぼけ症状さんを引き起こしたようでした。

 数日後、すっかり元気になったKさんの姿がクリニックにありました。亡くなったご主人の件はすっかり忘れてしまっているようでした。

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