クリニック通信Clinic Letter

12月の診療室だより

Oさんにとって、糖尿病は病気であって病気でないものでした。糖尿病の憎悪による頻尿、口渇症状もなく、手先・足先のしびれ等の合併症もまったくないのですから、医師を含めた周りの人に治療を勧められてもあまりその気にならないのも無理がないと言えます。一般的に、自覚症に乏しいOさんの様な例は糖尿病患者さんに珍しいことではありません。しかしながら、糖尿病は密かに身体を虫食むことが多いことが一方で知られています。
 肥満指数が30を超えるOさんが左胸に違和感を覚えるようになったのは、暑い夏が急転直下、寒さを感じる頃でした。心電図上は左程顕著な変化は認めませんでしたが、CTを用いた冠動脈造影では、複数の冠動脈狭窄を認める心筋梗塞直前の状態でした。
 死の危険をかろうじて避けられたOさんですが、改めて糖尿病の怖さを示した一例となりました。飽食の時代にあって糖尿病と向き合わなければならない現代社会は、その陰にあっては常に死を意識する必要があるのかもしれません。

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